マイノリティーな彼との恋愛法



すぐそばのベッドに押し倒され、さっきまで寝ていたぐちゃぐちゃの布団に身を埋められる。
濡れた髪の毛が崩れて、ひんやりとしたシーツに染みないか気になるけれど、神宮寺くんのキスは止みそうにない。

思ってたのとだいぶ違う。
こんなに甘いキスをくれるとは。

意外な一面を知って、余計に胸が高鳴った。


メガネをかけていないとさらにあっさりした顔の印象が強くなる彼の頬に手を触れて、ねぇ、と尋ねる。


「メガネは?」

「滑落した時にひん曲がりました」

「それはまた……お気の毒」

「そうでもないですよ。顔を近づければ春野さんの照れた表情がよく見えますし。新しいメガネは注文中です」


しれっとさらに照れてしまうようなことを言ってくるが、ヤツはちっともかっこつけようとかそんな雰囲気は出さない。
ただただ思ったことを口にしているだけの、不思議な真っ直ぐさを感じた。


「柏木さんが春野さんに目をつけてたと知った時、なんか無性に腹が立ったんですよね」


私に覆いかぶさった神宮寺くんが少し体を起こしてぽつりとつぶやく。
まだヤツのキスの余韻が残る私は、はぁ、と曖昧な返事だけを返した。

彼は着ていたコートとジャケットを脱ぎ、ネクタイを襟から引き抜いた。


「なんで腹が立つのか考えてるうちに春野さんの困った顔が見たくなって、つい手を繋いだりキスしようと押し迫ったりしたんですが、あなたの反応はいつも微妙で。余計に腹が立って。で、気がつきました、自分の気持ちに」

「微妙な反応なんかしてないし。ちゃんとドキドキしてたし」

「そうでしたか。なるほど。俺はたぶん、人の気持ちを察知するのが苦手なんですね。じゃあ心配しなくても俺たちは両想いだったわけだ」

「なにをそんな冷静に自己分析してんのよ。今どんな状況だと思ってんのよ」

「同意のもとでエッチするんですよね?」

「言うなっつーの!」


右手でヤツの肩を叩こうと振り上げたけれど、あえなくそれは彼によって寸のところで止められてしまった。

神宮寺くんは私のスウェットをさっさと脱がせにかかっている。


「恋愛なんて面倒くさいって言ってたくせに!」

「だって仕方ないじゃないですか。自分から好きだと思ったの、春野さんが初めてだったんですから。好きになるとちゃんと伝えたくなるし、面倒だと思わないんだと学びました。本当にありがとうございます」


なんで普通なら素敵だと思うはずのセリフが、ヤツが言うとちょっと面白く感じるんだろう。
ふふふ、と笑っていると、神宮寺くんが私の上で一瞬息を飲み、そしてマネをするみたいに笑い出した。

あ、三角の目をして笑ってる。
私の好きな表情。普段なら感じない人懐っこさが、全体から溢れてる━━━━━。


「春野さん。もしかして俺が来るの分かってましたか?」

「…………は?そんなの分かるわけないでしょ」

「じゃあこんなに刺激的な下着を、いつも身につけてるという解釈でいいですね」

「━━━━━なに言って………ぎゃあああっっっ!」


急に何を言い出したのかと思ったら、彼の視線で察してしまった。即座に悲鳴を上げたら、大きな手で口を塞がれる。
むぐむぐ苦しんでいると、ヤツの瞳が煌々と光った気がした。

しまった…………なんでもいいやって思って、適当に下着を身につけたけど。
風花ちゃんにもらったTバックのショーツを履いてしまっていた!

恐ろしや無意識!!