「ちゃんと言葉にしないと伝わらないと言ったのは春野さんですよ」
「ちょ、ちょっとちょっと!待って!」
ヤツの手に支えられていた体をどうにか揺り動かして抜け出した私は、パニックを起こしつつある心を必死につなぎとめながら一定の距離を保つように後ずさりした。
展開が早すぎてついていけない。
愛の告白なんていう甘ったるい雰囲気は一切見せない男、神宮寺渉。
これほどまでにあっさりした告白が、この世界に存在するなんて。結論だけ先に出されて、さぁどうぞと言われてるみたいで恐ろしい。
「大事なこと忘れてるでしょ!彼女はどうしたの、電話に出てたじゃない」
後ずさりしながらリビングに逃げ込む。
当たり前のように普通に追いかけてくる神宮寺くんは、どことなく面白そうなものを見るような表情で私を眺めている。
絶対楽しんでる、この男。
そんな彼が「やっぱりね」とため息をつく。呆れ気味の、ちょっとバカにしたようなやつを。
「そんなことだろうと思いました。きっと勘違いしてるんだろうなって。詩織は俺の姪っ子です。俺の10歳年上の姉の子で、中学生。塾の帰りに俺の家で姉の迎えを待ってただけです」
「中学生の姪っ子?」
「信じられないなら今すぐに詩織に電話してもいい」
「し、信じるっ。信じるよ!信じるけどっ」
「けど?」
安堵した気持ちとは裏腹にバクバクと音を立てる心臓。この大幅なキャラ変更にも思える神宮寺くんの態度が気に食わない。
人の反応を見て楽しんでるのも、腹が立つ!
あっという間に詰められた距離にスッピンであることも忘れて、知らず知らずのうちにファイテングポーズをとる。
「なんでそんなに迫ってくるのよ!」
リビングの壁はすでに背中についてしまって、逃げ場はどこにも無い。
追い詰められた後、神宮寺くんは両腕を私の顔の横へ伸ばし立てて逃げられないように囲った。
「今度こそ逃げられないようにしてるだけです。気を抜くといなくなってしまうので」



