マイノリティーな彼との恋愛法



「春野さん。ふざけてないで立って下さい。帰りますよ」


明らかにイラついている神宮寺くんに、分かってると返して立ち上がろうとするが、足が言うことを聞かない。

とにかく力が入らないのだ。


「ちょっと待って……。どうしよう、立てない!」

「本気で言ってます?」


神宮寺くんがやれやれと手を貸してくれてどうにか立ち上がるものの、支えがないと立っていられない。

29年生きてきて、ここまで酔いが回ったのは初めてだった。


「タ、タ、タクシー呼んで!」

「言われなくてもそうします」


慌てふためく私に冷静に返した神宮寺くんは、女将さんに「お世話になりました」と頭を下げて、私を半分引きずるようにしてお店から出た。


「とりあえず東口のタクシー乗り場までは歩いてもらいますよ」


まだ引きずろうとする彼の腕を掴み、ブンブンと首を振る。


「無理!腕がもげる!足も動かない!」

「ほんっとーーーに、しょうがない人だな」

「そんなこと言われたってどうしようも……、うわぁ!!」


神宮寺くんが体を屈め、やや乱暴におんぶされた。

ヒィーーー!!
おんぶされたの、子どもの頃にお父さんにされて以来なんですけどーーー!!


「いいっ!歩く!降ろして!重いし!」

「確かに死ぬほど重いけど置いてくわけにいかないでしょ」

「重いって言うな」

「とにかくじっとしててくれませんか。動かれると余計重くなる」

「…………ハイ」


どんな拷問なの、これは。
失態に失態を重ねて、イタイ女としか言いようのない展開になっている。

仕方がないので大人しく彼に身を委ねた。
マフラーの無い、寒そうな首元に腕を回す。

神宮寺くんが半分だけこちらに顔を向けた。


「頭痛以外に、体に不調はありませんか。気持ち悪いとか、手足が痺れるとか」

「……足の感覚はないけど、酔いが回ってるだけなので大丈夫……です」

「そう、それならいい」


路地を歩いている時は人通りがほとんど無かったからまだ良かったが、飲み会帰りの人たちが行き交う駅前に来ると私たちはだいぶ注目を浴びた。

うぅ、この歳になってこんなことになるなんて。情けない。
でも、神宮寺くんがいてくれて助かった。