「神宮寺くんは、いっつも何に関しても興味ないって顔してるじゃない?どんなことなら興味持つの?」
もう話題を変えよう、と決意して、とりあえずヤツについて聞いてみる。
今思えば、基本的なことを何も知らない。
何回か食事したのに、どんな会話を交わしてたっけ。
しかし私の質問を不満に思ったらしい彼は、少しばかり不機嫌そうに「失礼ですね」と反論してきた。
「顔に出ないだけで、それなりに興味持ってます」
「例えば?測量とウミガメ以外で何かあるの?」
「……………………」
「ほら無いじゃん」
先回りして答えを予測したら、どうやら当たったらしい。
測量とウミガメ以外に、なんか無いのか?
言葉のボキャブラリーも無いけれど、話題の引き出しも乏しすぎる。
「ウミガメの何がいいのよ?」
「黒目がちな瞳とふてくされた顔です」
「それ前に聞いたし!……なんかこう、もっと面白い趣味持った方がいいよ。一生続けられるような、楽しい趣味」
「一生続けられるような……」
思いのほかヤツの胸に刺さったのか、うぅーん、と思い悩むような仕草で考え込む。
そんなに考えるようなことか?
それだけ神宮寺くんには、興味を持てるものが少ないってことなのね。
「測量の仕事が面倒くさいと思ったことはないの?」
恋愛は面倒くさいのに、測量は面倒くさくないのが不思議。
きっと数字とかガンガン羅列して、難しい機械とかも駆使して、私には分からない世界で彼は仕事をしているのだろう。
彼はキッパリと「思ったことはないですね」と即座に答えた。
「建築物を建てる上で、測量は必ず必要なものです。住宅なら水平でなければ人は住めませんし、道路や橋が出来るのだって、しっかりとしたベースが無いと造れません。その最初の一歩が測量だと思うと、細かな数字を余すことなく記録するのは苦じゃないです」
「は、はぁ。でも測量士ってあまり目立たないよね。日の目は見なくていいわけ?」
仕事の話になるとやたらと饒舌になるところは、最初に出会った時と同じ。
よっぽど好きなんだなぁ。
彼は三角の目をしてふにゃりと笑った。
「花形の建築士と違って測量士は地味ですけど、建設業は測量ありきの仕事だと思ってます。最終的には完成した建造物を見て、無事に出来上がってよかったなあと安心するんです。何も無いところから測量して、建築士が図面を引いて、大工や施工業者が形にする。まあ、自己満と言えばそれまでですが、地味でも俺は現状にとても満足しているんです」
ロボット人間のように仕事しているのかと思ったら、そうじゃない。
彼は彼なりにこだわりを持っていて、そして充実感も感じている。
「仕事が好き」って胸を張って言える人って、日本中でどのくらいいるんだろう?
少なくとも、私の周りにはいないかもしれない。



