「春野さんも結婚願望強いですよね?良かったじゃないですか、売れ残りなんかじゃなくて、ちゃんと選ばれたんだから」
いちいち刺々しい言い方なのは、わざとなのか?
熱燗を手酌でお猪口に注いだ彼は、「いただきます」と手を合わせてから水でも飲むみたいにあっという間に飲み干した。
そんなヤツの横顔は、ずっと横顔のまま。
私の方なんて見もしない。
それだけで無性に寂しくなった。
「まだちゃんとしたデートもしてないのに、結婚なんて気が早い!」
「あっちはそうじゃないかもしれないですよ」
「なんでそんなこと神宮寺くんに言われなきゃいけないの?」
そろそろやめなきゃと思いつつも、イライラして日本酒を飲む手が止まらない。
気がついたら追加の日本酒を頼んでいた。
「なんでって…………、なんででしょうね。自分でもよく分からないです」
「はぁ?」
ついつい喧嘩腰で聞き返してしまった。
だってさっきまで噛み付いてきた彼が、今になって本気で悩み始めたのだ。
神宮寺くんは私に許可なくテーブルの上のおつまみを食べ始め、横目でチラリと顔色をうかがってきた。
「春野さんがこれから幸せになるんだろうなあと思うと、茶々を入れたくなるんです。それだけです」
「………………幸せになるかどうかなんて、そんなの分かんないじゃない」
「俺には分かります」
「じゃあ……あれも茶々を入れただけなの?」
「あれって?」
訝しげに首をかしげる彼に、それ以上は聞けなかった。
エレベーターで手を繋いで来たのは、単なる出来心で。ちょっとおちょくるつもりでやっただけの、無意味なものなんじゃないかって、どこかで分かってはいた。
分かってはいても、本人に肯定されたら立ち直れない気がした。



