マイノリティーな彼との恋愛法



私の隣にいたはずの渚がいない。
どこに行ったのかと思ったら女将さんと一緒に神宮寺くんの元へ行っている。

どうもどうも、と自己紹介を済ませた様子の渚が、笑顔でカウンターへ戻ってきた。
……神宮寺くんを引き連れて。


━━━━━連れてくんなっ!


私の心の叫びと同調するように、神宮寺くんがうんざりしたような顔をしている。
そういえば初めの頃に私が彼にメガネの弁償代として食事に行こうと持ちかけた時も、こんな顔をしていた。


「ちょっとちょっとひばり〜。神宮寺くん、わりと私は好みなんだけど。あんたの好みってそういえば彫刻像みたいな顔だもんね。確かに真逆だわ」

「……は、はぁ」


ヒソヒソと手のひらを返した親友を、半分呆れ顔で眺める。

そうだ、昔から私たちが好きになる男はカブったことがないんだった。
女将さんが言う、「見た目に関しては人の好みがある」ってこういうことなのね。


「神宮寺くん、風邪はもう大丈夫なの?」


先週キミはマスクをしていたじゃないか、と言うと、私の隣の席に腰かけた彼はこっくりうなずいた。


「完全に治りました」

「風邪こじらせるくらい、仕事忙しいとか?」

「先月よりは残業多めですね。でも帰ってやることもないので、残業が多いのは気になりませんけど」


……相変わらずの仕事人間だな。

初っ端から熱燗を注文する彼に吹き出しそうになっていると、逆隣にいた渚がツンツンと私と肩をつついてきた。


「ねぇ、ひばり。お邪魔のようなので私は帰ってもいいかしら?」

「え!ちょ、ちょっと!帰らなくていいよ!誘ったの私だし!」

「いいから、気にしないで」


コソコソと耳打ちして、渚はさっさと帰り支度を始める。

逆に2人きりにしないでほしい!
手を繋いだのとか思い出して恥ずかしさが止まらない!


しかし、そんな私の思いは渚に通じることなく彼女は風のように身支度を済ませ、私にではなく神宮寺くんに深々と頭を下げ、これ見よがしに

「ひばりのこと、よろしくお願いしますぅ〜」

と身をくねらせて、お店を出ていった。


さっきまでイケメン御曹司を推してた女はどこのどいつだ!
喉まで出かかった言葉を、日本酒と一緒に飲み込んだ。