マイノリティーな彼との恋愛法



これはサービスね、と飲みかけのグラスにお酒を注ぎながら、女将さんが続ける。


「だって見た目に関しては人の好みがあるじゃない?渉くんはバランスいい顔立ちで、目がちょっと切れ長なのよ。愛想はないけど笑わないわけじゃないし、なにより仕事を楽しんでやってるところは魅力的でしょ?」

「ほぉ〜なるほど〜」

「外で仕事したりするから体力もあるし、線はそんなに細くないはず。それからタバコも吸わない!お酒はかなり飲むけど」

「ふむふむ」

「失礼なことを言ったり、神経を逆撫でするようなことも言ったりするけど、悪気はないっていうか、本音しか言わないのよねー」

…………アレ?悪口になってない?

「基本的に斜めから物事を見るような感じで、普通の人と違うなあって思うことも多々あるし。社会人として大丈夫かしらと心配になるのよね」

女将さん、完全に悪口になってます!


同じことを思ったらしい渚が、笑いをこらえながら「悪口になってますよ!」と女将さんに一応伝えている。

指摘された女将さんは、しまった!という顔をして両手で口を塞いでいた。


「あははは!ひばり〜、やっぱりやめておきなよ神宮寺くんなんて!イケメン御曹司の方が絶対幸せになれるって〜」


と渚が大笑いするので釣られて笑ってしまった。

やがてガラガラとお店の扉が開く音が聞こえて、何気なくそちらを振り返った私は、声も出せずに動きを止める。
と、同時にグンと体温が上がった。

神宮寺くんが来たのだ。


「……あら!あらあら!いらっしゃい、渉くん!」


カウンター内にいた女将さんが慌てて神宮寺くんを招き入れる。
さすがに渚も分かったらしく、私の顔と神宮寺くんの顔を交互に何度も見返した。


「え!?ご本人登場!?」

「…………うん。本人が来ちゃった」


いくらなんでも外にまで私たちの会話が漏れていたとは考えにくいが、ほぼほぼ悪口になりかけていたので若干気まずい。


神宮寺くんは自分の話題が出ていたなんて夢にも思っていないようで、私が来ていることに気がつくと「どうも」と軽く会釈してきた。