「それって完全にバカにされてない?ひばりが顔色変えるの見て楽しんでるんじゃないの?」
渚が口にした言葉は、私も昼間に仮定したものだった。
そんなことはない!と否定出来ない神宮寺くんの性格。ヤツなら無表情の下で、いやマスクの下で笑っていた可能性もある。
あの行動に深い意味なんて、やっぱり無いよね……。
どことなくガッカリして、そして手を握られた時に久しぶりに感じた、胸を鷲掴みにされるような強いドキドキ感を思い出して悲しくなった。
あんな体中がドキドキすることなんて、なかなか無い。
やられた、こんな思いをすることになるとは。
苦悩する私を、渚は面白そうにほくそ笑んで肩を揺らす。
「もう完全に好きって感じね、ひばり。神宮寺くんの思うツボだったりして」
「そ、そ、そんなわけないし!一応フタしてあるもん、この気持ちには!」
「どうせつついたらすぐ緩むようなガタガタのフタでしょ?」
失礼な!ガッチガチに固めたつもりなんだけど!
頬を膨らませて無言の抵抗をしていると、それよりもさ、と渚が頬杖をついた。
「そっちのイケメン御曹司の方が何百倍も良くない?そんな好条件の人、なかなか現れないでしょ。玉の輿も夢じゃないよ」
「それは……分かってる」
2人を置いて並べて、じっくり比べたら。
考えなくても分かる、神宮寺くんよりも柏木さんの方がいいってことは。
「どうせ神宮寺くんってそんなにかっこよくなくて、ちょっと背中とか丸くて屁理屈っぽいんでしょ?……話聞いた勝手なイメージだけど」
渚の言う神宮寺くんのイメージは、遠からず近からずといった感じだった。
屁理屈をごねられた記憶はないが、ああ言えばこう言う性格ではあるような。特に恋愛への考え方はいつでも否定的だ。
すると、隣のお客さんと話をしていた女将さんが、するりと私たちの会話に介入してきた。
「あら、渉くんはなかなかいい男だと思うけどなぁ〜」
「え!そうなんですか?」
私より先に渚が食いついた。



