その夜、渚と待ち合わせした私は、とっても美味しいお店を見つけたと彼女を引っ張り、駅前東口にある小料理屋『酔いどれ都』へ連れてきた。
いかにも隠れ家っぽいのに、中年のサラリーマンが多いことや綺麗な女将さんがいるので、渚は驚いていた。
「なにこのお店!めちゃくちゃいい感じ〜。どうやって見つけたの?」
「神宮寺くんに教えてもらった」
カウンター席に通され、女将さんに簡単に挨拶を済ませたあと生ビールを注文。
おしぼりで手を拭きながら、渚が落ち着いた雰囲気の店内をキョロキョロと見回した。
周りのお客さんが食べている料理を見ては、「あれ美味しそう!」「あっ、あれも食べたい!」とすでに楽しそうだ。
「料理はハズレがないし、日本酒も最高に美味しいよ」
「ボーナスも入ったことだし、今日は酒盛りだね」
「お、いいね」
早速届けられたビールのジョッキをカチンと合わせて、「乾杯」と飲み始めた。
適当に料理を頼んで、女2人ガツガツ食べてはお酒を飲む。
私たちは2人ともわりとオヤジくさいところがあるので、周りがサラリーマンだらけでも浮かない。
「で?何か話したいことでもあったんでしょ?」
何杯目かの日本酒を頼んだあたりで、腕を組んだ渚が肘をついて体ごと私の方を向き、ニヤリと笑みを浮かべた。
「さすが親友……。よく分かるね」
「だってラインが切羽詰まってたもん」
昼間に送ったライン、どんなのだっけ。
『親友よ!ヘルプ!飲みに行こう!』の三言だったような。
そりゃ分かるか、相談があるって言ってるみたいな内容だな。
どこから話すか迷った挙句、全部洗いざらい話した。
神宮寺くんのことが気になり始めたこと。
だけどメガネの弁償も終わり、会う機会が無くなったこと。
イケメン御曹司に気に入られたこと。
神宮寺くんへ傾きかけた気持ちにはフタをしようと決めたこと。
それなのにヤツがエレベーターで手を握ってきたこと。
「ほぉ!ほぉ!」と、やや興奮気味に話を聞いていた渚は、最後の「手繋ぎ事件」で大げさなリアクションでうなだれた。
「あちゃー……マジか〜!」
「え……なによ、その反応」
思ったようなリアクションじゃなく好ましくない反応だったので、ついつい眉を寄せてしまった。



