マイノリティーな彼との恋愛法



「週末の合コン、相手方が設計事務所の人たちなんですよ。だから来るのはみーんな建築士です!どうですか?行ってみたくなりませんか?」

「なりません」


どうだ!とばかりにプレゼンを決め込んできた風花ちゃんを、あっさり塩対応で突っぱねた。


いや、そりゃ私だって建築士は素敵だと思うけど。
だけど冷静に考えて、風花ちゃんみたいに若い子が連れてくるのっておのずと相手も若い人になると思うのだ。

20代前半から半ばにかけての若い男女が一堂に会し、ワイワイ仲良くしゃべってるところに私みたいな三十路手前の女がいたらどうなるのか予想がつく。

どうせ昭和と平成で線を引かれて、風花ちゃんがお得意の年の差攻撃をしかけてきて、恥をかくのは私に決まってる。


「そんなこと言わないでくださいっ。大丈夫です、春野さん若く見えますよ?」

「別に歳をごまかそうなんて思ってないけど」

「まぁまぁ。とにかく参加してみましょうよ。久しぶりの合コンならなおさら!干からびる前に男性に免疫つけておきましょ。ね?」

「人を干物女みたいに言わないでくれる?」

「えー、やだぁ、春野さん全然干物じゃないですよぉ〜。片足突っ込みつつありますけど」


肩をすくめて小鳥のような高い声で笑っている彼女を、もはや私は死んだ魚のような目で眺めるほか術がない。

こいつと話すのめんどくさっ!

思わずそのまま口にしようか迷っているうちに、風花ちゃんがデスクにあった付箋紙に黄色いクマのキャラクターがついたボールペンでサラサラと何かを書き綴った。

それを、ペタッと私のパソコンに貼り付けてきた。


付箋紙には合コンの日時と場所が、まぁるい独特な字体で書かれていた。


「だーかーらっ、行かないってば!」

「もう決定でーす、来てくださーい」

「仕事が終わらないの!残業になるから遅くなるし」

「全然オッケーです。むしろ遅れてきた方が注目されてチヤホヤされますよ?」

「若い女の子を差し置いて誰がアラサーをチヤホヤするもんか!いっぺんこの歳になってみろ!」


最後の方はほぼ暴言に近い物言いだった。
それでも風花ちゃんはめげなかった。


「ダメです。決定です。遅くなってもいいから来てくださーい」


呆れて反論できなかった。
これ以上言い合うのも面倒くさいし疲れるし、何を言っても無駄だと気がついた。


ため息をついて、ついでに小さく舌打ちもして。
7年ぶりの合コンに行くことを決めたのだった。