「かわいいでしょ!」



自慢げに、荒川さんは笑う。

まぁ、“かわいい”んだろうな。“綺麗”も“かっこいい”も似合わないもの。

“かわいい”ん だ、ろう け、ど・・・うん。私だったら買わない。

それは「私の雰囲気に似合わない」とか「センスが私と荒川さんで違う」とかそういうんじゃなくて、

「男の子が居にくい」

と思うんだけどな。

(ユウもよくこんな買い物を許可したものだ。私には散々文句言ってたのに)



「まぁ、なんとか駆使してみるよ。」



望果はそう言った。

その苦々しい顔から、たぶん私と同じ事を考えてるのは目に見える。

荒川さんは「よかったぁ。」と楽観的に笑って、パタパタとグループの方に戻りなにやら喋り出していた。

裕哉がね~、と繰り返し必要以上にしつこく使われている気がするが聞こえない聞こえない。



「暁里。」



彼女が離れたのを確認してか、ある人が私に話し掛けた。

まぁ言うまでもないかな。



「・・・何?」



普通に返事をしたつもりだったのに、自分の耳に飛び込んできた私の声はトゲトゲした低い声。

振り向いた視線の先には、予想通りの人。

ねぇ、声聞くだけで分かるようになっちゃったよ。

ユウ。



「その・・・ごめんな?」

「何が?」



分かってるよ。意地悪なのは私だ。

けれど、眉根を下げるユウを見ると、なぜだかイライラが募る。



「別にやましいことないんでしょ?

クラスメートなら買い出し行ったって当然じゃない。

私そこまで束縛する気ないし、怒ってないし、謝られても困るんだけど。」



一気にそう口にする。

裕哉は一回口を開いて、閉じて、それから「・・・そうだよな。」と小さく小さく呟いた。