もしも、もしも、ね。



乱れる息を整えながら、コースの内側に入る。

で、出来たの・・・?

不安になりながら膝に手をつけば、望果が「やったぁ!」と私に抱きついた。


顔を上げれば、汗と酸素不足で霞む視界の向こうに赤いはちまきの男の子。

全力で走る彼の手には、






しっかりと、バトンがあった。






ホッとして力が抜ける。

けれど回りはそんな状況じゃなくて。

ユウが2位にあがり、1位と僅差になっていることへの絶叫が校庭を支配していた。

一瞬私に抱きついていた望果も、

いつの間にか近くに来ていた准君も、

必死にユウの名前を叫んでいて。


私も負けじと口にした。



「ユウーーーーーーーッ!!!」



祈るように手を組む。

騎馬戦の時よりずっとずっと強い気持ちで願う。


あと数センチ!


あと、あとちょっとで抜ける!!


勝てるよ、ユウ。抜ける!!





「――――――ッ!!!」





赤組全員が、息を詰めた。