もしも、もしも、ね。



「大丈夫だよ。なんとかなるって。な?」



ユウの手が私の頭をぽんぽんと撫でた。

准君にやられるのは平気なのに。

やっぱりユウがやるとなんだか熱くて。



「痛いわよ。」



ぶっきらぼうにそう言えば「そんな強く叩いてない。」って笑われた。

痛くないもん。本当は。



『それでは、これより二人三脚を始めます。』



放送が入った。

思わず身が固くなると、頭にあった手がそっと私の肩に回った。

緊張のせい。緊張のせい。

この呼吸困難になりそうな震える喉を必死に押さえつけて、

私も震える手をユウに回す。



『選手入場。』



放送の声とともに、私たちは歩き出した。



―――あれ?



「今、せーのとか言ってないよね?」



歩きながら、ユウを見上げる。

声は合わせてもないし、どちらからと約束もしてない。

けれど私たちは転ぶことなく歩いていて。



「ホントだ。 ・・・実は気合うんじゃね?俺ら。」

「―――そーかも。」



いつもは「バカ言わないで。」と怒鳴るところをちょっと素直になってみる。

そうすれば、ユウも驚いたように目を見開いて。

それから「緊張しなくても平気。」と私に回った手で頭をまた叩いた。