もしも、もしも、ね。


望果の「赤組優勝するぞーっ!!」って叫んだ嬉しそうな声。

佐久間君の「哉が“ぜってぇ勝つ”って約束してくれたしさ。」ってほころんだ瞳。

キャピキャピ軍団の、甲高い声援。



それを全部崩したのが、私のせい?

クラスメートの悔し涙、私のせい?



「・・・勝手なこと、しないでよ・・・ッ!!!」



涙が出そうだった。

分かってるよ。ちっちゃな事だって。

人生なんて大きなもの中の、たかだか高校生活で、2年目の1年間の一環で、

イベント事の一部で、体育祭の一部だって。


だけどさ。

だけど。


練習も、応援も、たったその一部のたった一瞬のためだった。

大きく見ればくだらないものだけど、

“今”としては全力投球したい“一瞬”で。

いつかきっと、“思い出”になるものなのに。



「ごめん。」



私があのとき「しないよ」ってちゃんと叫べばよかったのかな。

ううん、それ以前に嘘の恋人なんてしなければよかったの。

そうすれば、きっと。

リレーだって、あんなもやもや残さずに上手く行ってたはずなのに。



「先、行くな。」



いつのまにか立った篠田がこつんと私の頭を指の付け根の骨で叩く。

その感覚に。離れていく足音に。

思わず涙がこぼれた。



「・・・ふぇっ・・・ッ・・・。」



最悪。

最悪だよ、こんな体育祭。


いいよ。こんなことで何悲劇のヒロインぶってんだって笑って。

いいよ。そんな小さなことでめそめそするなって呆れて。

いいよ。いいよ。全部いいから。


それでも、私は、今思いきり泣きたいんです―――