もしも、もしも、ね。


おそるおそる、聞いてみようかと思って口を開いた。



「まさか。」

「・・・。」

「まさか、本気であのキャピキャピ女の言ってること気にしたわけじゃないわよね?」



篠田の目が一瞬私を捕らえる。

少し大きくなった目が表していたのは驚きなの?



「暁里は、気にしなかったの?」

「気にしたわよ。だけど、するわけないって。

あとづけの拒否はいくらでもできるじゃないって。そう、思って。」



篠田は?

下がった頭に向かって問いかける。

壁に寄っかかっていた背がずるずると落ちて、彼は廊下に座り込んだ。



「俺、結構気にした。」

「?」

「―――俺は、気にした。 暁里、嫌がってるだろうなって。」



心臓がドクンと鳴った。

口に手を沿えると、唇が小刻みに震えているのがわかる。



「篠田・・・私の、ために・・・負けたっていうの・・・?」


ゆっくり紡ぎ出した音は、唇と一緒に震えていて。


お願い。

首を横に振って。

否定して。

横に。

横に。

ねぇ。








「―――うん。」







首は動かなかったけど。

肯定、された。