もしも、もしも、ね。



「―――だったら?」

「は?」

「だったら、なんだっつーんだよ。」



篠田は私と視線も合わせないでそう言った。

はっきりとはしないけど、


「わざと負けた」


それを肯定した。

私は思わずカッとなる。



「どうしてよ! 佐久間君に約束したんじゃないの?

絶対勝つって約束したって佐久間君嬉しそうだったのに!」

「・・・」



完全無言の篠田に腹が立った。

佐久間君、あぁは言ってたけど、私はアレが本心すべてじゃないと思ってる。

いくら将来有望なサッカー選手でも、普通の男の子だもん。

みんなとやりたかったなって。

俺も出たかったなって。

悔しくて、寂しくて、羨ましいに決まってる。

そういう気持ち、1%でも、0.00000001%でも、ないわけがない。



「佐久間君は、出たくても出れないのに。」



寂しそうだったもん。

気のせいかもしれないけど、目が「いいな」って言ってたもん。

親友の篠田が気づかないわけない。

彼の本心に。



「ねぇ。どうして負けたのよ。」



声音を緩めて、呟くように尋ねる。

でも、やっぱり篠田は無言だった。

だからと言って、どこかに行くような素振りもなかった。


解答を待つしかないのかな。


そう思った私の脳内で一個の理由が浮かび上がる。

「まさかね」と私が真っ先にはずした理由。

まさか、気にしてないよね。

まさか、覚えてないよね。

そう思った理由。