もしも、もしも、ね。






***






まったく。

「そのせいで」というべきか、「おかげさまで」と皮肉を込めるべきか。

とりあえず、ユウの騎馬戦が原因で私の気は完全に逸れた。

ハードル走はとりあえず1位を取ったけど、

今のお昼休みになるまでまったく記憶がない。


頭の中で繰り返される映像は、騎馬戦。

決勝の、大将戦。


あのとき、ユウは―――



「なんだよ。」



校舎内、二階廊下、突き当たり。

私とユウはそこにいる。

私が引きずり込んだのだ。人気がないところに。

目線も合わせないユウは、相変わらずリレーの件なのか。

それとも私の言わんとすることを気づいているのか。



「何のつもり?決勝戦。」

「は?」

「篠田、わざと取られたでしょ。」



私の角度だから見えたのか、よくわかんないけど。

佐久間君やキャピキャピ軍団は気づいていなかった。

確かにユウは一瞬相手の手を止める力を緩めたんだ。

それで取られておしまい。


あれがわざとなら、校庭でのあの“無表情”も頷ける。


追及するために冷静で。

でもどこか私も悔しくて。なにより怒っていて。


呼び方が「篠田」に戻っていることなんて、気に留めなかった。