もしも、もしも、ね。


「お熱いねぇ。」

「いや、熱くない!!」



思わず佐久間君にまで言われて私は必死に否定する。

照れるとか赤くなるとか出来ない私は、むすっと口を尖らせながら校庭に視線を戻した。



―――え・・・?



ユウと、目線が合う。 そして、すうっと風がなびく。

気のせいか、と思うほど一瞬で、ユウの視線はそらされた。

真っ直ぐ前を見据える横顔は、端正な顔立ちをより際だたせていて、

好き嫌い関係なしに、かっこいいって思える。

キスはしたくないけど、いや実際しないけど、



『頑張れ。』



素直にそう思って、指通しを絡めて手を組んだ。

佐久間君との約束守りなさいよ。

だから、絶対勝ちなさいよ。




「始めっ」



マイク越しの先生の声。

砂埃と声が校庭中を舞って、騎馬戦が、始まった。





高三も混じっているというのに、

ユウは全然引けをとらなくて。



トーナメント方式の騎馬戦。

赤組は、決勝戦で敗れた。



二位って結果は、嬉しくて。どこか悔しくて。

涙を流す生徒も居る中、

ユウは誰とも戯れず、袖で汗をぬぐってた。


明暗別れた校庭の中心で、無表情のユウはなんだか浮いていた気がする。





そして、私にも気になることがあった。