もしも、もしも、ね。



大体、さっきからいたっつの。わざとだって見え見えすぎて笑えてくる。



「裕哉がいながら佐久間にもべったりなのぉ?」

「やだ、桜野さんってもしかして男好きぃ?」



クスクスと小馬鹿にしたような笑い方。

あぁ、なるほどね。彼女たちの好きな男と一緒にいる私が気にくわないと。

っていうか、佐久間君もやっぱりモテてるんだなー。


背に女の子に乗られながら、佐久間君は私に向かってVサイン。

伝わりにくいけど「大丈夫?」とか「気にするな」の意なのかな?

私もVサインを返した。



「あーッ。裕哉出てきたぁ。」



え?と思い校庭に視線を移す。

あ、ホントだ。いつのまにか騎馬戦にチェンジしてる。



―――ユウは簡単に見つかった。



赤組の中央にある騎馬。上に乗ってるのがユウ。

はちまきがたなびく中、大将である印のお面型のカブト。

あらま。アイツさりげなく大将なんだ。



「裕哉ぁ!負けるなよぉー!!」

「負けて返って来たら、青汁ねぇーッ!!!」



と、佐久間君の背にのりながら叫ぶ女の子達。

ちなみにユウは完全無視。

その中で一人の子が私の腕を掴んだ。



「ほらぁ、桜野さんも応援してあげなよぉ。彼女でしょ?」

「え?ちょ、ちょっ―――」

「裕哉ぁーっ!!勝ったらぁ、桜野さんがキスしてくれるってぇーッ!!」



私のストップもむなしく、叫ばれる彼女の声。

バカでかい声は、確実にユウまで届いてる。

だって、回りの男子が冷やかしの声あげたもん。

あぁ、もういつ誰が何処で何時何分何秒そんなこと言った!!