もしも、もしも、ね。



ユウが。

ユウがあんまりにも優しく笑うから。

なんだか急に胸の奥から言葉に出来ない暖かい気持ちが上がってきて、

視界がぼやけた。



「泣いてんの?」

「泣いてない!!」

「ハハッ、さっきもしたな。この会話。」



ユウはそう言って笑って、繋いでいない手で私の目を拭った。

そのまま私の頭をぽんぽんと撫でる。

涙の取れた視界に居たユウは今まで無いくらい優しい目をしていた。



「ごめんな、ルール破って。」

「―――・・・ううん。」

「他にも。暁里が俺に振り回されてるって感じてたことも、気付けなくてごめん。

俺、怒らせたり泣かせたり、恵理奈のことも言ってねぇし、ホント悪かったと思ってる。」



私の頭を撫でながら、ユウは話す。

その瞳は本当に謝罪に満ちていて、それでいて私をいたわるような優しさに溢れてて、

私は胸一杯で言葉にならなかった。

ただ、大丈夫だよ、と伝えたくて必死に首を横に振った。



「俺、もうそういうことしねぇから。

ちゃんと全部暁里に話す。暁里の話もちゃんと聞くようにする。

―――だから。」



陸斗の家の振り子時計が12時を鳴らすのと、

ユウの次の言葉は同時だった。