もしも、もしも、ね。



ずるい。ずるい。

私がユウを好きなのもう知ってるくせに。

ユウに反抗なんて出来ないこと分かってるくせに。

私はゆっくりと顔を上げてユウを見た。

あとちょっとでキスするっていうくらい近いユウと私の距離。

少し下がった前髪の作る陰がユウを大人っぽく見せて、

はじめて見る顔にドキドキが加速した。



「暁里。」

「―――な、ぁに?」

「嫉妬したんだって?」

「!!」



甘い空気から一変。

意地悪な笑顔を浮かべるユウにさらに体が熱くなる。

恥ずかしいこと思い出させないで・・・!!



「一人で誤解して、ヤキモチ妬いて。」

「ち、ちが!」

「せっかく俺のために頑張ってケーキも焼いたのにな?」

「ど、どうして・・・ッ」

「人が食べるもん投げるなよ。」



あ、と私は思い出す。

そういえば勢い余ってユウに投げつけたかも・・・。



「な、中身は?」

「ぐっしゃぐしゃのベッタベタ。」

「―――・・・やっぱり。」



ちょっと凹む。

また視線を逸らすけど、



「でも今まで食ったもんの中で一番美味かった。」



なんてユウが言うから。

私は嬉しくなって、驚いて、顔を上げてしまった。



「食べたの!!?」

「悪い?」

「悪くは、ないけど・・・だってぐちゃぐちゃだって・・・ッ!!」

「ぐちゃぐちゃだろうがなんだろうが、お前が作ったもんには変わらないだろ?」