もしも、もしも、ね。



「それですぐ思い出せなかったんだけど、お前らと別れて恵理奈に会ったときにふと思い出してな。」

「そうそう。

お兄ちゃんったら私の顔見るなり裕哉のこと矢継ぎ早に聞くからそっちの趣味になったかと思ってびっくりした。」



茶化すように恵理奈ちゃんが笑う。

陸斗は「おい」とふざけながらも低い声を出した。



「まぁそれはおいておいて。で、お兄ちゃんがユウのことをあんまりにも聞くからね?

これは何かあった!と思って私は裕哉に接触したわけ。

―――まぁ、この軽率な行動のせいで一斉に私と裕哉が付き合ってるって騒動が起きちゃったんだけどね?」



裕哉と従兄妹って言えないから噂消すの大変だったよー!

そう言って恵理奈ちゃんは笑った。



「え?どうして言えないの?」

「だって、もし言ったらファンクラブ怖そうだし、裕哉目当ての子とか近付いてきそうだし、目立つし・・・そういう意味で裕哉って百害あって一利なしじゃん?

暁里さんすごいよねー、よく学校で公表してるよねー。」



こ、この子あっけらかんとすごいこと言った・・・!!

笑顔で毒づく恵理奈ちゃんに恐怖を覚えつつ、ユウの「お前なぁ」という怒った声に笑った。

そうしていると、「でもね。」と恵理奈ちゃんは眉根を下げて私を見た。



「でも、そのとき・・・ていうかついさっきまで、私は暁里さんがお兄ちゃんの元カノであることを知らなくって。

それから、暁里さんが私と裕哉の関係を知らないことも知らなかったの。」

「―――俺は、陸斗と恵理奈の関係を知らなかったんだ。つい、さっきまで」



ユウも小さく呟く。



「さっき、裕哉が慌てて暁里さんを追いかけたあと、すっごい凹んだ顔して戻ってきて。

とりあえず、よく分からないけど、誰かに相談して解決しなきゃ!と思って裕哉引っ張ってこの家に来たんだ。」

「来た瞬間陸斗が出てきてびっくりした。・・・陸斗は陸斗で平然としてやがるし。」



なんとなく、光景が想像できる。

私は噴き出しそうになるのを必死にこらえた。