もしも、もしも、ね。



私も携帯を鞄に入れて、「うん」と立ち上がった。

少しだけ、寂しいと思ってしまった。

もう少し、話したいと思った。

それが思い切り声に現れてたらしくて、陸斗が微笑む。



「これからは、気兼ねなく電話だってメールだって出来るだろ?」

「陸斗。」

「会うことは・・・まぁ、浮気になるだろうから出来ないだろうけど?」



この人、こんなに優しかったんだ、って思う。

陸斗は「陸斗が私の明るさを消した」って言ったけど、

私も「陸斗の優しさを消して」いた。

私達は最高に気が合う存在だろうから、

すれ違ったときもことごとく打ち消しあうのだろう。



陸斗は、テーブルに置いてあった伝票を手に取るとさっさとレジに行ってしまった。

慌てて追いかけて「払うよ」と言うと、

「男の面目潰すな」と彼は私の頭を撫でた。

ゴチになります。

手を合わせた私に「よろしい」と陸斗は歯を見せる。



お店を出てから、すぐに私と陸斗の方面は正反対だった。

少し向かい合って見つめ合う。



「じゃぁ、ね。 陸斗。」



たどたどしく挨拶をする。

笑顔だってきっとぎこちない。

陸斗はまた、変わらぬ癖で私の髪を乱した。



「そんな顔すんなよ。」



そう言ったって、しかたがないじゃない。