もしも、もしも、ね。



嘘。

嘘。

陸斗が、一瞬でも、私を。



「暁里。 ありがとうな。」



陸斗が、初めて私の名前をちゃんと呼んでくれた気がした。

苦しくて苦しくてどうしようもなかった小さかった私が、

初めて、救われたような気がした。

ねぇ、陸斗。



「だったら、なんで文化祭のときあんな意地悪な顔してたのよ。」



ごめんね、私素直じゃないけど。

ずっとお互い口に出せなかったことをこうして言い合える関係になれたことを嬉しいって思う私の気持ち、

こんな言葉から察せられる?



「お前、言うタイミングの空気読めよ。」



そう言った陸斗の顔は、言葉こそ呆れてるものの笑っていた。



「だって、お前があまりにも俺のこと睨みつけるからさ?」

「―――理由になってない。」

「最高の理由だろ?」



私達は笑い合う。

もしもお互いもっと素直だったなら、

もっと信じあえていたなら、

もっと、もっと―――今くらい落ち着いていたのなら。

私達は、意外と相性が良かったのかも知れない。

同じようなことを思っていたのだろうか。

不意に神妙な面持ちになった陸斗が「なぁ、暁里?」と私に声を掛けた。



「お前の好きなヤツって、この間いた彼氏だろ?」

「―――うん。」

「“好きな人が出来た”って表現をさっきしてたけどさ、

もしかして好きじゃないのに付き合ってたのか?」

「正解。」

「・・・それでも、俺よりそいつがいいわけ?」



少しだけ考えてみる・・・間もなく私は答えた。



「もちろん。ユウと陸斗は全然違うよ。

今は、ユウが好き。」