はっとしてあたりを見渡せば教室にはほぼ人が残っていなかった。

ユウ、もういないや。

そう思っていると、「裕哉君は准と先行ったよ。」なんてエスパーみたいなことを言われる。

(あ、そういえば准君いない・・・ってごめん。このレベルの扱いで。)

苦虫を噛み潰したような表情で望果を振り返ると、

彼女はニヤリと悪魔のように笑った。



「嵌ってますね、奥さん。」

「・・・怒るよ?」

「冗談だよぅ!」



机から教科書と筆箱を取り出し終えた私は、待たせていたことを棚に上げてさっさと席を立つ。

そんな自分勝手な私を咎めることもなく、望果はぴょこぴょこと私の後を付いてきた。

廊下から、外を見る。



「―――もう、すっかり冬だね。」

「だね。」



窓越しでも、乾燥した肌を突き刺す温度が伝わってくるようだった。

枯葉すら付けなくなった裸の木々が寒々しい。



「ねぇ、暁里?」



景色から視線を外すことなく、望果は語りかけるように話す。



「分かってると思うけどさ。」

「・・・うん。」

「いつまでも、この状態に甘えてちゃ駄目だよ。」



返事が出来なかった。

分かってる。

分かってる。

けれど、毎日何かしようと決意して、毎日出来ないでいた。

頭では分かっていても、体が竦んでしまうのだ。

ユウと付き合っているはずなのに、

私の心はこの世界のように冷え切り、そして何の色もなかった。