もしも、もしも、ね。



―――この子に勝てる日なんて来るのだろうか。

思わずため息をつく。


まったくもってその通り。


気付いてしまった、私。

だって、よくわからないけれど私を変えたらしい人がいるのだ。

その人は望果じゃない。

それと同時に私は気付いていた。

私の気持ちを、表情を、こんなにも変えることが出来るのは・・・彼しかいない、ということ。



いつだって頭の中にいるのは、彼だった。



「―――でも、果てしなく今更なような気がする。」



だって、遅かった。気付くのが。

無くしてから気付くなんて、私は変わらず馬鹿だ。

遅すぎたのだ。

あきらめるしかない。

今更私、何をすればいいの?

大体、ずるいもの。

気付いた瞬間、態度を翻すなんて。

はぁ、とため息をついて、

眉を下げながら笑うと望果は「暁里・・・」と困ったように私を見た。



「そこの泣き顔の不細工。」



―――空気を破る低い声。

いけない、すっかり存在忘れてた。

思わず顔を向けると、ずっと無言でいた准君が伏せていたはずの瞳を鋭くこちらに向けていた。

切れ長の瞳がすっと私を見つめていて、思わず身が竦む。