「別れようか。」



最後の言葉を告げたユウは、やっぱり冷たい瞳をしていて。

けれどその奥は暗く揺らいだ。

彼は私の返事を聞くことなんてなく踵を返す。

私は金縛りにあったように動けなかった。

時計の秒針の様に、規則的に鳴らしながら遠のく足音。

「裕哉!」「裕哉君!」

引き止める声が、二つ。



さっきより強く吹いた風が私の体から熱を奪って、私はその場に崩れ落ちた。



「暁里!」



低い男の子の声が咎めるように鋭く私を呼ぶ。

けれど聞きたかった声じゃない。



「おい、暁里!!」



声の主はぐいと力ずくに私を振り向かせた。

抗う術なんてなくて、人形のように私は彼に体を向ける。

彼―――准君は、私の両肩を持ってぐらぐらと大きく揺らした。



「お前今アイツに何言った!いくらお前でも・・・!!」

「准!」



新たな声が割り込んで、私の肩から力が離れる。

すべてが他人事のように見えた。

私と、准君の間に、望果が入っただけだけど。



「お前も庇いすぎだぞ、望・・・ッ!!」



気配で、准君がまた私に体を向けたのが分かった。

ハッと彼が息を呑む声が聞こえた。

―――気のせいかもしれないけれど。