四月二十四日

* *

私は無事に中学を卒業して無事に高校にも合格し入学した。

高校生活は、それなりに楽しい。

だけど悔いてる事が私にはあって有意義な高校生活を送っていても忘れられなかった。


卒業までに沙耶の彼氏が動くかもしれないとわかっていたのに誰かわからない事を理由に私は結局何も出来なかった。


そして今日は土曜日

桜が綺麗に咲き誇っている中、私は“ある人”と待ち合わせをしていた。


桜並木の下のベンチに座りながら…

沙耶の彼氏を。


「来てくれるかな…」


鞄から日記を取り出し
当時の事を思い出す。


私は中学校生活の中で四人の死を経験する事になった。

一人は沙耶…転落死…と最初はなっていたけど後に他殺と判断された。

沙耶は殺された。

三人のクラスメイトによって。


沙耶を殺した三人の内

一人はベランダからの転落死(しかし途中から自殺の線で検証された)

二人目は三月上旬に時計塔からの自殺(遺書めいた一斉メールが届いたから)

三人目は卒業間近に…


「久しぶりだな、日比野」


私は声をかけられ、読んでいた日記を閉じて顔を上げた。


「久しぶり。変わらないね」


声をかけてくれたのは沙耶の彼氏

見つけるのにはかなり苦労した。


「隣、座っていいか?」


「うん…」


正直、ドキドキしていた

彼が中学の時よりもカッコよくなっていたからとかではなく(実際のところカッコイイ)


もしかしたら私は殺されるかもしれないから…と覚悟はしていたけど彼の様子を見る限りだと警戒する必要はないみたい。


例えそうだとしても、やめよう


「高校は楽しい?」


「まぁ、それなりに」


そうだよね。

心から楽しいとは思えないよね。


「それで、日比野が俺を呼び出した理由は何?近況報告とかするような仲でもなかったと思うけど」


「酷いなぁ、元クラスメイトに対して冷たいよ……沙耶の彼氏さん」


そう言うと暖かな日差しの春の気温が少しだけ変わった。

風で桜がはらりと散っていく。

その光景はとても儚く感じた。


「梶谷から聞いたのか?」


「遠からず近からず。梶谷さんは沙耶に彼氏がいたってところまでしか教えてくれなかった。誰なのかわかったのはつい最近」


偶然わかった。

知った時は納得、出来たけど。


「どうやってわかったんだ?沙耶の両親でさえ知らない事を」


「デパートで買い物してたら、たまたま沙耶のお母さんに会ったの。御葬式の時に顔を覚えていたから」


「記憶力いいんだな」


「印象に残ってたの。友達の御葬式なんて初めてだったし、私達に気を遣ってくれた人だから」


沙耶のお母さんは帰り際、私達クラスメイトに『来てくれてありがとう』と『沙耶と仲良くしてくれてありがとう』と言ってくれた。


涙を流しながら、それでも気丈に振舞っていたのだから忘れるはずがない。