死人に口無し。

寧ろ良かった。


日比野翔子が接触する前に自ら消えてくれて良かった。


これで私も協力者の彼女も大丈夫だ。

疑われる事はない。


日比野翔子も私達を疑っている様子は見れないし案外楽勝だったかも。


私の手は地に汚れた…純粋で真っ白な綺麗な手じゃないけど、彼が私の知る彼に戻るなら構わないよ。


あとは受験と卒業だけだったのに

消えたんだよね…

協力者の彼女が時計塔から転落死。


しかも遺書を残して。


私の名前は書かれていなかったけど、深く考えれば私だと断定されてしまう可能性がある。


何してくれてんのよ、あの馬鹿。


馬鹿のせいで沙耶の転落死の検証の再度やり直しが決定したし、目撃者だったアイツの転落死も見直された。


学校と裁判で戦っていたアイツの両親は喜んでいるだろうけど私は違う。


余計な事をしてくれたよ。


しかも彼にバレていた?

彼にカッターナイフを向けらたと遺書のメールに書いてあったという事はバレているんだ。


彼にとって私の行為は幼馴染みとして裏切りに近いかもしれない。


* * * *

警察の皆さん

私は彼に戻ってほしかった。

変わってしまったのが嫌だった。

彼を変えた沙耶を許せなかった。

* * * *


三月十九日、その時が来た。


見た事もない狂気に満ちた彼の瞳は怖くなかった。昔の彼に戻ったわけではないから嬉しくないけど…。


放課後の教室には私と彼しかいない。

というか今日は学校休みの日だ。

不法侵入ってやつかな?

普通の中学だから監視カメラを付ける金なんて無いぐらい普通の中学校。


壊れたはずの時計塔以外は…。


狂気を向ける彼の瞳は私に何を望んでいるんだろうか?


許しを請うつもりはない。

だけど、せめて私だけが知ってる彼だったら何も思い残す事は無いのにな…。


それだけが残念で仕方ない。


彼がどうやって私達を特定したのかは知らない。もしかしたら梶谷さんと繋がっていて初めから知っていたかもしれない


だとしたら、彼は怖いな…

私よりも恐ろしい…


あぁ、人は平等なんて嘘だ

人々が平等だったら、こんな想いを抱く事なんてきっと無かった。


生まれながらに持つ才能

優れた容姿、抜群の運動神経。


みんな、バラバラ。

平等なら皆、幸せなはずだ。


愛情と憎しみは同じ…そんな事さえも思う事だってなかったはすだから。


子供なんて試験管で作ればいい

そして究極な平等の生活で過ごせば、個性があったとしても、変わる事なんてなかったはずだ。


彼のように…。


さて、私は、これから死ぬ…のかな。

復讐と狂気に満ちた彼によって。