彼は昔のような彼に戻らなかったけど、いずれは戻るはずだ。

沙耶の事さえ忘れれば彼はきっと私だけの知っている彼に戻り、私が彼女になれるんだから。


待つんだ…

焦ってはいけない。


心配するふりをして話しかけたりもした。幼馴染みだとこういう時、楽だったりもする。幼馴染みだからこそ彼と話していても誰も何も言わない。


彼を変人としてみていた奴らが今になって彼に好意を持つなんて馬鹿馬鹿しいし、そんな奴らの嫉妬の眼差しなんて気にしないから。


協力してくれた彼女は別だけど、彼を渡すつもりはないよ?


そう思いながら、受験生である私達のクラスの中はピリピリとしていた時期が始まった頃…


運命の歯車を動かした日がやってきた。


二学期終業式の日に梶谷さんの転校。

別にどうでもいい……って浅はかな気持ちでいたのが間違いだった。


梶谷さんは沙耶は他殺だと断言して堂々と犯人のヒントを残し教室を去って行った。


目撃者のクラスメイトはわかりやすく反応し怯えていた。口止めしてるから口を破る事はないと思うけど、念には念を入れなければならない。


冬休みは協力者の彼女と過ごしていた。平然を装えば何とかなる。仮に誰かが疑われればクラスメイトに内緒で心配するふりをすればいい。


そうすれば仮に犯人扱いされた人が何をしようが私達に疑いの目は向かない。


予想は的中…
年が明ければ直ぐに犯人捜しだった。


目撃者のアイツは不登校…

どうでもいい。


私が心配なのは自分が疑われないか

そして彼の様子だった。


犯人捜しには乗り気ではないようだ。

そりゃあ付き合っている事を内緒にしていたんだから無理もない。


結果、私は免れた。

協力者も同じだった。


これで一安心って思っていたのに、またもや誤算が起きた。


日比野翔子。

何の正義感か知らないけど色々と何か考えているようだった。


コイツは敵に回していけない

私の中の危険信号が鳴る。


元々、あの子とは仲が悪かったわけじゃないから普通に接すればいい。


それが一番いい。


私はいつも通りにしていればいいんだ。


そうしていたら殺害現場の目撃者が自宅のベランダから転落死したと知った。