私は今でも彼が大好き。

だけど!!私が大好きだった頃の彼に戻ってほしかった。


その為には…沙耶には消えてもらおう。


でもそんな事、簡単に出来るはずがない。一人では出来ない。小説を読んでいるとよくわかる。フィクションなら一人でもどんな事でも容易いが、残念ながらノンフィクションでは無理だ。


普段から沙耶に友達として接するのに限界がきていた時だった…。


中学二年の二学期ぐらいだったかな?
詳しくは覚えてない。

私は彼と沙耶に対する“とある視線”に気づいた。それは初めは好意と憧れだったけど次第に妬みも入っている事に気づいた。


彼と沙耶に対してだけど、もしかしたら主に沙耶に向けられているんじゃないかと私の勘がそう働いた。


彼女は入学当時から同じ小学校の女子と共に行動していたけど、ずっと一緒ってわけでもなく、お互い良い距離を保つ仲のようらしく、一人でいる事も稀にあった。


その隙を突いて、私は何となく聞いてみた。今まで話した事なんて一度もなかったわけじゃないから単なる世間話から恋バナへと移行させていく。


案の定、彼女は彼が好きみたいだった。

私とは違う意味で沙耶が邪魔らしい。

利害が一致した。


でも消えてもらうなんて、そう簡単には出来なかった。沙耶は優秀だし親友の梶谷さんも頭は回る方だから下手に行動は出来なかった。


陰湿な嫌がらせなんて通用しない。

なら、本当に消えてもらうしかない。


私は十四才の内に終わらしたかった。

未成年の犯罪は顔や名前が公開されないし十四才だと不起訴になり反省文でも書いていれば楽に戻れる。


もちろんリスクがあるのは承知の上だったけど早いに越した事はないし、彼が前の彼に戻ってもらうために犠牲になってもらうだけだ。


結局、決行が出来たのは三年生になってからで私も彼女も十五才になってしまったけどバレなければ良い。


人が少ない放課後
静かな非常階段と裏庭。


誰にも相談出来ない、沙耶にしか出来ない話があると言えば簡単に着いてきた今から消える女。


落とすのは意外にも楽だった。

腑に落ちないのは、落ちる時に儚げに、私達を可哀想な子供のように見ていた事だけだったけど…誤算が起きた。


比較的大人しい女子で沙耶とそれなりに仲良くしていたクラスメイトに見られてしまった事だった。


でも、さすが大人しく控えめな性格のクラスメイト。少し脅せば簡単に頷いてくれた。


沙耶の死は転落死として処理され私と彼女の計画はバッチリだった。正直不安材料だらけだったけど転落死として警察が判断したならそれで構わない。


まぁ、彼が学校に残っていた事には驚いたし第一発見者として沙耶の傍で警察や救急車など呼んでいた事には言葉が出なかった。


沙耶が消えても変わらなかった。


確かに、ぶっきらぼうだけど根は優しいのは前までと同じだけど沙耶が消えた今でも沙耶を想っていて入る隙間がなくて、何も変わらなかった。


もう座る事のない沙耶の机に触れ哀しげな表情をする彼に誰も話しかけられなかった。


私達がした事は無意味だった??


念のため、誰も来ないであろう旧図書室で彼女と目撃者のクラスメイトを連れて口裏合わせをした


(この時は、まさか梶谷さんに携帯で録音されていたなんて思わなかった…)


後にマスコミが押し寄せてきてインタビューとかに答えなくちゃいけなくて教師達が守ってくれたけど、思っていた以上に世間的に大騒ぎになり、イジメは無かったのかどうか調べられていた。


陰湿なイジメをしなくて良かった。
判断は間違ってなかった。
してたら即逮捕されていた。

沙耶はいじめを受けてはいない。

みんな、そんな事しないから。


まぁ、どうせ転落死した女子高生のニュースなんて数日すれば消える。

実際に報道されていた期間は短かった。