三年生になり、クラス替えが無いから彼と同じクラスで嬉しいけど沙耶も同じクラスだから嬉しくない気持ちもあって複雑だった。
二人はまだ別れてなく付き合っていた。
上手く隠してるようだ。
私が暴露すれば沙耶はどうなるかな?
しちゃおうかな?と思ったけど彼に嫌われたくなかった。
どうすればいい?
受験生でもあり、恋に破れ、私は親友にバレないように平常心を持っていた。
受験でストレスが溜まり発散したい気持ちもあったかもしれないけど
私は、誰もが知らない事を知っているからこそ二人の関係を見ているのに我慢の限界がきていた。
そして、あの日…
沙耶を呼び出して
七月の暑い日に私は…いや
私と同じ悩みを持っていた人と一緒に、沙耶を非常階段から突き落とした。
響く沙耶の悲鳴と共にスローモーションのように落ちていきドサッと鈍い音が沙耶を叩きつけた。
ただ沙耶を落とした時の沙耶の儚げな表情が頭から離れなかった。もしかしたらわかっていたのかもしれない。こうなる事を。
だけど、これでスッキリした。
まさか尾崎さんに見られたのは予想外だったけど口封じをして難を逃れた。
彼女を失い精神的に参っている彼を慰めて私に心を許してくれてあわよくば彼女になれるかもしれないと思い上がっていたのが間違いだった。
恋は盲目、誰にも止められない。
でも…邪魔された。
彼は今でも沙耶を想っているし何より梶谷さんが、旧図書室での会話を録音されていたから。
しかも三年の三学期の終業式に爆弾を私達に残して去って行った梶谷さん。
梶谷さんはわかっている。
誰が沙耶を殺したのかを。
小心者の尾崎さんはわかりやすい反応を皆に見せて、それから不登校。そして自殺。
面倒な奴が消えて私は良かった
でも、容疑をかけられている加藤夏希や天城恭子がいるけど私だとバレるのも時間の問題だった。
現に今、目の前にいるから…
カッターナイフを私に向ける彼。
沙耶の彼氏が。
好きな人に刃を向けられている
殺されそうになっている。
別に構わない。
好きな人に殺されるのは本望だ。
だけど、彼はそれを許さない。
「俺の為を思うなら…堕ちろ」
「昼休みが終わる十三時に鐘が鳴る」
「時計塔から堕ちろ」
「見届けてやるから」
それが好きな人である彼からの初めての頼みであり私の最期だった。
彼が見てくれるなら、私は堕ちる。
沙耶と同じように堕ちたら彼の記憶に私は残ってくれるかな??
私は…彼の為なら全てを捧げる。
* * *
警察の皆さん
私は、沙耶を殺しました。
沙耶がウザかったから
嫉妬してたから
死んでしまえと思ったから
* * *
午後の授業をサボり
学校にある時計塔に登り
普段は鳴らない時計塔が鳴った。
鳴らないはずの時計塔が鳴って、みんな時計塔に注目していた。
時計塔に立ってる私の事も。
私はクラスメイトに長い文章の遺書を一斉メールで送った。
彼にも届いたかな?
さよなら、大好きな人。
貴方の願い、叶えてあげる。