三月九日

* * *

最初は本当に
羨ましいと思っていただけだった。


小学生の時は恋に興味がなかったのに中学校に入学してから彼を見た瞬間に痺れたというか

恋幕と憧れと両方混ざったような不思議な感覚に襲われて目が離せなくなった。


これが一目惚れなんだと自覚した。


でも、話せるタイミングや話題を上手く掴めないでいた。

彼にとって私は、ただのクラスメイト。

一方的な片想いで、好きな人がいる事を親友に話していても誰なのかまでは話さなかった。


彼を狙っている人は沢山いたから。


無愛想だけど、さり気ない優しさを持っている彼に惹かれない人はいない。

でも、親友は眼中になかったみたいだから私は安心していた。

気まずくなるし親友と恋のライバルにはなりたくはなかったから。


彼を好きになってから一年。

二年生になった時に親友と買い物しに出かけた時に私は見かけてた。


彼を…。

チャンスだと思った。


その時、親友はジュースを買いに少し離れた自動販売機に行っていたから彼に話しかけようとした。

どのように話しかけようかシュミレーションを何回もして、意を決して行動しようとした。


でも、それは叶わなかった。


彼が急に歩き出して私は目で追った

その先には沙耶がいたから。


学校でいつも一緒にいる梶谷さんは何処を探してもいない。

沙耶はオシャレをしていて彼も学校では見せない表情をしていた。


私は直ぐにわかった。

二人は付き合っている事を。


あぁ、私は失恋した

私の恋は終わったのだと。


いつ頃から付き合い始めたのかな?

全く気づかなかった。


学校で彼と沙耶が話しているところは見た事があっても必ず隣には梶谷さんがいたし、嫉妬するほど仲良くしていなかったから。


彼に彼女がいる噂だって無かったから私は安心していたけど、間違いだった。


諦めよう…そう決めた。

沙耶には勝てないと、わかってから。

明るく元気で分け隔てなく皆に接している沙耶に勝てるはずがない。


それに彼と沙耶の幸せそうな、あの空間に入り込むような事も出来ない。


わかっていたはずなのに、二人が付き合っていると知って、初恋だったからこそ辛く苦しく、そして彼の隣にいる沙耶が羨ましかった。


学校では内緒にしているのか二人は付き合ってる雰囲気を出さないでいた。


知っているのは私だけ?

梶谷さんにも内緒にしてるのかな?


二人だけの秘密、羨ましい…

彼と沙耶が恋人同士だとわかっているから、今までとは違う意味で見てしまう。


【憧れ】だった。

ドラマや漫画のような理想なカップル


だけどいつしか、その憧れや羨ましいさが、黒く渦巻く嫉妬に変わっていった。