「さぁて話はここまでにしようか」


「ま、待ってよ梶谷さん。私…残りの犯人を教えてもらってない」


帰ろうとする梶谷さんを私は引き止めた


「翔子って、頭が回るのか回らないのかよくわからない馬鹿ね」


「は?」


「私は教えるつもりは一ミリたりともないわ。教えるとも言った覚えはないでしょ?」


「…っ!!」


そう…だけど、このまま引き下がってもいいの?せっかく会えて話せたのに、この先もう会って話したりする事なんて無いかもしれないのに


「でも強いて言うなら、嫉妬…よ」


「嫉妬?」


思わぬ単語に私はポカーンとしてしまったけど、沙耶の殺害理由が“嫉妬”??


嫉妬は人を狂わせるとも言われているけど中学生が嫉妬で犯罪に手を染めたって言うの?


「二人の馬鹿の嫉妬のせいで沙耶は死んだの。沙耶の彼氏、女子から人気あったから黙ってたのにアイツら、知っちゃったみたいなんだよ」


「たった、それだけで…」


「そう。たったそれだけのくだらない理由で、沙耶は殺されたの。こんなの許すわけないじゃない」


「…っ……」


「話は、これでお終いよ。わざわざ私に会うために受験校を変更したんだから今日は私が奢るわね。無駄な進路変更になったけど」


私は悔しくて、でも言葉にできなくて、手をギュッと爪が手に食い込むまで握りしめながら梶谷さんを睨みつけるしか出来なかった。


梶谷さんにとっては怖くも何ともないだろうけど、これが私に出来る抵抗だった


「翔子、これ以上は自分で考えなさい。残りの犯人二人は彼が何とかすると思うから指をくわえて見ているか、沙耶の彼氏を当てて復讐をやめさせるか決めるのは貴女よ」


「待ってよ、梶谷さん!!」


呼び止めても梶谷さんの背中は遠く離れていく


「彼は暴走するかもしれないけれど私は彼が満足するなら構わない。でもね、中学生に完全犯罪は不可能なの。そんな事できる脳なんて中学生にあるわけがないし、私に会話を録音される事もないんだから」


「待って!!」


会計を済ませてカフェを出た梶谷さんの腕を掴み私は引き止めた。


「梶谷さんは、このままでいいの?」


「何が?」


「沙耶のためを思うなら、彼氏を犯罪者にしたら駄目だって思わないの?」


そんなのどうでもいい、関係ない、構わない、で済ませていいの??


「彼を止める事なんで出来ないの。私にはね」


「梶谷さん、でも!!」


「翔子!最後にこれだけは言っておくね。私は何もしてない。尾崎さんを殺したのは貴女達クラスメイトと御両親」


「何もしてなくないじゃん!!」


「私は手を下してないよ?ただ話しただけだから。だから私と違って、更生するべきなのは貴女達なのかもしれないわね」


「梶谷さん…」


これで、もう二度と貴女には会えない。


「それじゃあね翔子。バイバイ…」


“貴女は自分自身の手で青春を無駄にしたのよ”


立ち去っていく際に微かに聞こえた梶谷さんの声。


この言葉を私は忘れる事は

けして、無いだろう。