「でも尾崎さんは何もしていないよ?」
「え?」
何も…してない?
それじゃあ、どうして尾崎さんは犯人の仲間なの?
「梶谷さん、確認するけど…尾崎さんって三人のうちの一人なんだよね?」
「そうだよ。尾崎さんはね、ただ見ていただけなの」
「見てた…だけ?」
わからない…わからなくなってきた
見ていたから犯人の内の一人って事?
「翔子は知ってる?あの日、沙耶が亡くなった時の第一発見者」
「確か、蒼井奏太くん…」
「そう、クラスメイトの蒼井くん………って事になっているけれど本当は尾崎さんなの」
「尾崎さんが??」
あの日、確かに何人かの生徒は現場にいたけど尾崎さんはいなかった。
第一発見者にも関わらず、何もしやずに帰ったって事?
「尾崎さんはね、沙耶が二人に殺される瞬間を見てしまったの。正しくは殺害現場をね。そして二人に口封じされ、逃げたのよ」
「そう…なんだ…」
嘘だ!…って思いたいけど、普段から控えめで大人しかった尾崎さんなら脅されたら、言う事を聞いてしまうかもしれない。
尾崎さんを庇うつもりはないけど、尾崎さんもは怖かったんだと思う。
だって、尾崎さんと沙耶は仲良くしていたからこそ殺害現場を目撃してしまって恐怖に襲われ、しかも犯人二人に口封じをされたのだから…
「もし尾崎さんが逃げずに直ぐに誰かを呼んでいたら、携帯で救急車を呼んでくれていたら、沙耶は助かっていたかもしれない」
「梶谷さん…」
「それなのに尾崎さんは自分の身を大切にした。もうこれは二人と共犯と同じだと思わない?尾崎さんにとって沙耶は初めての友達だと言っていたのに、裏切ったのよ」
裏切った。だから梶谷さんは尾崎さんを許せないでいるんだ。
もし、私ならどうしてただろう?
私も逃げてたのかな…
それとも逃げた後に犯人二人に内緒で救急車に連絡していたのかな?
完全に分かる事を言うとしたら、私は蒼井くんのようには出来なかったと思う。
「裏切り者には制裁を…なんてね」
「そんな言い方っ…」
「でも私は何もしなくて済んだ。貴女たちクラスメイトが彼女を死へと追い詰めた」
「…っ……」
蒼井くんに見せてもらった中傷メール
思い出すだけで手に力が入る。
「随分と酷い中傷メールを送りイタズラ電話したみたいね」
「私はしてない…」
「へぇ、翔子はしてないの?あははははは、そうだろうね。もし送っていたら言っている事とやってる事が逆だからね」
「梶谷さん、笑い事じゃっ…」
笑い事じゃない!!と言おうとしたら梶谷さん遮られてしまった。
「まぁ、尾崎さんにトドメを刺したのは沙耶の彼氏だけどね」
「っえ…」
それは、驚きの事実だった。
「どう、いう事?」
「どういう事かって?…教えない。自分で考えなよ、翔子」
途端、冷たい目線を送ってきた梶谷さんに私は平常心を保つので必死だった。