「翔子に私の気持ちはわからないだろうし、わかってもらおうとも思わない。とにかく私は犯人がいる憎き元クラスメイトに絶対に会わないために全寮制のミッション系の高校を選んだの」


親友を失った梶谷さんの気持ちはわからないけど、クラスメイトを失った気持ちはわかるよ。


悲しかったよ。


でも、親友を殺されたってなると気持ちが変わってくるのかな?


「あのさ、ミッション系の高校って梶谷さんってクリスチャンだったの?」


「違う。クリスチャンとか関係なく入学できるよ」


「そう…なんだ…」


まさか、そこまでして沙耶を殺した犯人と同じ空気を吸いたくないんだ。


だとしたら梶谷さんは、ずっと我慢していたんだね。

沙耶を殺した犯人のいる教室で転校の日がやってくるまでいつも通り生活して…


それが、どれだけ辛いか

私には見当がつかない。


「ねぇ翔子」


「何?」


もう必要ないと思いテーブルに広げていた教科書やノートを鞄にしまった。


「どうしてそんなに真実を知りたいの?正義のため?クラスメイトのため?」


「それは…。だって、みんな勝手に人を犯人扱いしたりしてたし…そんなのおかしいでしょ?間違ってるでしょ?」


ただの憶測で加藤さんは、いじめによって傷つき不登校になってしまった。


明らかにおかしいよ。


「真実を知ったところで貴女には関係ない事でしょう?」


「そんな事ない、関係あるよ!」


「まぁいじめがあるクラスで卒業したくない気持ちはわからなくはないよ?自分のクラスにはいじめがあった…なんて過去いらないものね」


「梶谷さん…」


「みんな単純で馬鹿。体は中学生でも心は小学生のままなんだよね。だから、いじめが起きる事ぐらい予想は簡単だった」


「だったらどうして、あんなヒントの残し方をしたの!!そのせいで……」


みんなから加藤さんは犯人扱い。

友達だった水谷さんも離れていった。


「私もまさか加藤さんがいじめの標的になるとは思わなかった。私は“バスケ部に所属していた”なんて一言も言ってないのにね」


「…??」


梶谷さんの言葉に私は疑問を持った

あの場にいなかったはずの梶谷さんが知らないはずの事実を知っている


それにさっき、私が志望校を変えた事も知っていた。


「…な…何で梶谷さんが私の志望校を変更した事や加藤さんの事を知ってるの?」


「それは…もちろん、聞いたからよ」


「誰から…そんな話」


クラスメイトの誰か…だよね?


「翔子、そんなに誰から教えてもらったか知りたいの?気がひけるけれど貴女なら教えても構わないかな」