本当にこれは現実なんだよね?


「…………………」


私は何回も目をパチクリさせた。


「翔子、ここに座ってもいい?」


「う、うん…」


私は窓側で二人用の席に座っていたため、梶谷さんがもう一つの向かい側の席に座った。


「勉強の邪魔してゴメンね」


「だ、大丈夫」


本当は勉強しやずに梶谷さんが通るのを待ってたなんて口が裂けても言えない。


それにしても、梶谷さんのブレザーの制服似合ってるなぁ。

セーラー服も似合っていたけど、ブレザーも、とても似合ってる。


そもそも梶谷さんはスタイル良いから何でも似合いそうだ。


「何回も電話したのに翔子ったら出ないんだもん」


「え?梶谷さんからだったの?非通知だから無視してた」


知らない番号や公衆電話からなら何となく出てみようかな?って思うけど非通知だと気が引けてしまう


「まぁ、普通は無視するよね。無視しなかった人もいたみたいだけど…」


あー、どうしよう。

私は驚きを隠すのに必死だった。

桜坂高校に行くにはカフェを通らないといけないのに私は梶谷さんに気づかなかった。


「だけど驚いたよ。私と会うためにわざわざ受験校を変更するなんて思わなかった」


私の肩がピクリと動いてしまった。


「何で、その事を…」


私は、受験校を変更した話は大抵の人しか話していないのに。


「そんなに私に会いたかったんだね。でも残念でした。私は沙耶と約束した高校を受験するのをやめたの。だけどせっかくだから貴女に会いに来た」


「…え?」


受験するのをやめた?

なら、どうして此処に来たの?


だけど、受験しないなら私が梶谷さんを見過ごしたことに関して合点が行く


桜坂高校目当ての道以外からカフェに入ったなら気づくわけがないから。


「どうしてやめたの?桜坂高校に入学する事、沙耶と約束してたんでしょう?」


「だって隣に沙耶がいない事を実感してしまうから」


目を伏せて、注文した紅茶のティーカップをギュッと熱いはずなのに握りしめていた


「翔子、私はね…現実逃避してるって思ってくれても構わないの」


梶谷さんの鋭い目が私を射抜く