二月上旬 十九時十分



三学期に転校して新しい中学にも慣れ始めた。


前の中学はセーラー服だったけど今通っている中学はブレザーで可愛い方だと思う。


別に制服とかどうでもいいんだけど。


校舎の設備だって帝都中学と変わらない至って普通の中学だ。


「待ったか?」


私は今、転校した中学の近くのカフェにいて“ある人”と待ち合わせをしていた。


会うのは久しぶりだった。


「まさか本当に来るとはね」


「呼び出したのは俺だからな」


店員さんに私は紅茶のお代わりと、彼はコーヒーを注文した。


「転校って言っても県外じゃなかったんだな」


「私は一言も県外に転校するとは言ってないよ」


「確かにな。それで、新しい学校生活には慣れたか?」


「それなりにね」


三学期という中途半端な時期に転校してきたから、転校初日は質問攻めにあって疲れた。


沙耶を殺した奴がいる中学にはいたくないって、あの時は言ったけど本当は父の仕事の都合でもあったんだよね。


だけど、この際なら別れの挨拶の時に沙耶の事を話そうと決めた。


事故でも自殺でもない…他殺だと。


もちろん彼には事前に話していたけど


「尾崎さん、亡くなったのね」


「あぁ」


「転落死なのね」


私は彼をジーッと見た。

本当に“ただの転落死”なのかどうかを。


「梶谷は、これで少しは満足か?」


「それは貴方も同じでしょう?」


彼もまた、私と同じように沙耶を殺した犯人を許せないでいる。


沙耶のこれからの人生を奪った

あの三人を。


「加藤さん、どうしてるの?」


「不登校」


「そう…」


「聞いといて、無関心なんだな」


「そんな事ないけど…」