* *

「…わからない」


梶谷さんのヒントなんてもう頼らないって決めたのに天城さんと樺山さんの会話を聞いて、わからなくなってきた。


「はぁー」


未だ他のクラスとは違う空気の教室に戻った私は自分の席に座り顔をうつ伏せた


寒い屋上にいて体が冷えたからストーブで温まっている教室のおかげでジワリと温まるけど、やっぱり雰囲気が違う。


「翔子ちゃん、大丈夫?」


「へ?」


不意に顔を上げると佐藤さんが心配そうに私を見ていた


「いや、何か体調悪いのかな?って思ったの。疲れたかのように教室に入って来たから」


「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」


私は笑顔で誤魔化した。


【成績】【バスケ】

この二つに共通する人。


本当にそれだけを頼りにしてもいいの?


「ん?」


何かが胸に引っかかる


今思えば、梶谷さんは成績優秀としか言ってなかったからトップの人とは限らないし、バスケが大好きって言っていただけでバスケ部とは限らない。


何で気づかなかったんだろ!!


もっと早くに気づいていれば加藤さんがいじめられる事もなかったかもしれないし追い詰められる事もなかった。


最小限に防げたかもしれない。


それに、趣味が読書の人はクラスに沢山いるしバスケが好きな人も沢山いる。


私だって運動する事が大好きだし。


…あ…そういえば内海さんもバスケが大好きで小学校の時に活躍してたなぁ…


でも尾崎さんの事を気にかけていたし様子だって伺ってたから犯人なわけないよね。


「…次は、天城さん…か…」


証拠なんて無いのに、加藤さんがいなくなったから皆は天城さんをイジメの対象にするのかな?


天城さんなら陰口を言われても無視するかもしれないし、仮にメールで『死ね』とか送られても、その場で削除して何事もなかったかのように振る舞うような気がする


ノートへの落書きや上靴を隠されたりとかされても気にも留めない強さが天城さんにはあるように思える。


私の勝手な想像だけど一度、天城さんが疑われた時、動揺する事もなくしれっとしていた。


だけど、心配だなぁ…。


このクラスで、またいじめが始まるのも見ていて嫌になるし、だからと言って止める勇気もないし。


私は結局、何も出来ないのかな…