一月九日

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朝になると、ニュースで尾崎さんの事が報じられていた。

言葉が出ずに朝ご飯を食べる気もなれなかった。


「翔子、尾崎さんって…まさか」


お母さんが心配そうに私に聞いてきて、私は言うのが辛くて頷く事しか出来なかった。


急きょ全校集会を開くと連絡網が来た時には、私はとっくに尾崎さんの死をニュースで知ってしまった。


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学校に登校すると予想を裏切る事なくマスコミが居て教師達が蹴散らしていた。


そして教室ではなく雪村先生から体育館へ行くように誘導された。


全校集会をするのだと直ぐにわかった。


全校生徒がみんな揃うと校長先生が舞台に上がり「黙祷」と言って一分ぐらいした後、校長先生は命の大切さを説明し始めた。


命の大切さなんて、もう嫌ほど実感している。


「何か悩みがあるなら先生に相談しましょう、先生に話しにくいなら友達や御両親に話して下さい」


そんなの無理に決まってるのに。

無理だから抱え込んじゃうだよ。


校長先生の話は詭弁でしかない。

先生に守って貰えなかった生徒の気持ち絶対にわからない!!


雪村先生は尾崎さんを救えなかった。

だって、加藤さんがいじめられている事を今も黙認している。


先生に守ってもらえなかった生徒の気持ち考えた事、雪村先生はきっとない。


私の勝手な想像にすぎないけど。


じゃあ先生と生徒の信頼関係って何?

クラス替えがないこの学校は三年間担任が同じの場合が多い。


現に雪村先生は一年の時から変わる事なく担任の先生だ。


三年近くも学校生活を共に過ごしていたのに信頼関係は築けていなかったんじゃないかと思う。


築いていたら、こんな事件なんて起きなかったはずだ。