私は野次馬の周りを見渡した。


もしかしたら梶谷さんが近くにいるかもしれない。


尾崎さんの姿を見るために此処に来ているかもしれない。


尾崎さんがベランダから落ちたのか落とされたのか確証はまだないけど、これが梶谷さんの仕業なら、貴女も人殺し!


「翔子!」


名前を呼ばれてハッとした。

鋭い神経が緩むような感覚だった。


「内海さん、水谷さん」


二人は三学期が始まってから尾崎さんの家に何回も訪問に来ていた。


尾崎さんの分の宿題を渡しに来たりして気を配っていた。

二人も居合わせたんだ。


「内海さん、水谷さん、私…もう…わからないよ」


自然と涙が出た。

たとえ沙耶の死に尾崎さんが関わっていたとしても

こんな事あっていいはずがない!!

どうか生きてほしい。

無事に退院して顔見せてほしい。


もし、本当に沙耶の死に関わっているならきちんと償ってほしい


「翔子…」


内海さんは泣いている私を優しく抱きしめてくれた。


「安心しなよ。ね?」


内海さんは優しくて温かい。

水谷さんも頭を撫でてくれた。


私はいつのまにこんな弱くなったんだろう?


二回も死を目の当たりにしてるから?

頭に浮かぶのは沙耶の葬式と告別式。

二度とこんな思いはしたくない。


「ねぇ…加藤さんまでこんな事になったらどうしよう」


不安が私の心を巡る。

身近で二回もこんな現場を見ることになるなんて。

私はどうすればよかったの?


「翔子、少し落ち着こう…」


「…内海さん」