「一緒にお弁当食べよう」


そう言ってくれた沙耶ちゃんの笑顔は私には眩しく感じた。


「私なんかと一緒に?」


「“私なんか”なんて言ったら駄目だよ。私も朱もね、一度りなちゃんと話してみたかったの」


隣にいた梶谷さんも嫌そうな顔をしてなかったから私は頷いた。


クラスメイトから初めて名前を呼ばれてちょっとドキッてしたけど嬉しかった。


私にとって沙耶ちゃんと梶谷さんは初めての友達だった。


だからつい色んな事を話しちゃった。

胸の奥に抱えていた物…
家庭の事情の事を。


一瞬、引かれるかな?離れていくかな?面倒な奴って思われるんじゃないかな?って思ったけど


それは、私の考えすぎだった。


「沙耶ちゃん、この問題わかる?」


「えーと、数学は朱の方が得意だから朱に聞くといいよ」


テストが近くなると放課後、学校に残って一緒に勉強をしてくれた。


「梶谷さん、この問題教えてほしいの」


「うん。いいよ…この数式はね…」


梶谷さんもわからない数式の解き方のコツを教えてくれて本当に嬉しかった。


私は二人に沢山与えられた。

沢山くれた。

私に笑顔をくれた。


成績、奪う奪われる、蹴落とすの呪文から私はやっと解放された。


普段は沙耶ちゃんと梶谷さんは二人一緒にいて私は一人。


でも助けてくれた事に変わりはない。

二人は恩人。


いつか恩返しがしたい。

私にできる事なんて限られてるけれど、私にしかできない恩返しをしたい


そう思った。


でも…叶わなかった。


そんな日なんて来なかった…。