彼女がそいつ...附田先生を見ているときの表情は、いつも泣きそうで、悲しそうで。

それでも、附田先生が話しかければ、さっきまでの表情はどこへ、かわいい笑顔いっぱいになっている。

彼女にこんな表情をさせる附田先生が、むかつく。

そして、うらやましい。


俺が彼女を初めて見たのは、中学校の新人戦の時だった。

俺は彼女のプレーを先に見ていたから、彼女はかっこいい人なんだ、と思っていた。

でも、たまたま近くを通りかかったとき、枩谷さんと話している彼女は、かっこいいというイメージではなかった。

プレーではあんなにキレのある判断、力強いスピードで周りを圧倒するのに、話ているその姿は、口数が少なく、バスケの実力に気づいていない、そんな感じだった。

それから、彼女が気になり始めて、彼女のことが知りたくて。

塾に通っていた俺は、同じ塾の彼女と同じ学校のやつと話すようにした。

そいつから聞く彼女は、やっぱり口数が少なくて、あんまり話したことがないということぐらいで、何もわからなかった。

それでも彼女に少し近づけたと思うと、うれしかった。

そのころ、俺には県内でも強豪校、全国大会でもいいところまでいっている高校から特待の話が来た。

それでも、ちょうどその時、そいつから彼女は公立校を受ける、と聞いて、すぐ断った。