あの、怒りを抑えきれず枕を叩きまくっていたら寝落ちしていたのか、気づけば朝日が登っていた。

‘‘コンコン’’

「姫様、アリアスです。」

私付きの侍女である、アリアスだ。
きっと、朝の身支度に来たのだろう。

「どうぞ」
「失礼します」

彼女は私がナスラス国の王女だった頃からの侍女で私の本性を知る一人

彼女の前では取り繕わ無くていいので楽だ。

「昨晩はどうでしたか」

無表情で聞いてくる。

私は彼女の入れた紅茶を飲みながら

「そんな失礼なこと聞くのあなたぐらいよ、アリアス。」

そう、アリアスをたしなめた。

「主人の体の調子を把握するのは侍女の務めかと。」

そう、淡々と答えるので

「それを、何も聞かずにするのが貴方の仕事でしょ」

って言い返してやった。

「言いますね」

と、一言言って彼女は自分の仕事を始めた。

「あのクソ小僧ね、私の事愛さないんですって。それで、一年後に離婚する気らしいわ。」

そう、つぶやくとアリアスは手を休めず
「あら、それでは姫様の計画はおじゃんですか?」

「だから!奴を私に惚れさすのよ。ほら、アリアスも何かいい案出してよ。」

アリアスをせかすととんでもない答えが帰ってきた。

「そんなの簡単ですよ。裸で王太子様の寝所で寝てればいいんです。」

「………貴方ってもっと賢いのかと思ってたわ。」

呆れてそう言うと、

「私に学はありませんよ。言ったでしょう、初めて出会った日に。私があなたに教えれるのは剣技や戦術だけです。」

「そうね、男と交えるのは刀だけのあなたに聞いた私が馬鹿だったわ。」

「賢明なご判断で」
アリアスは、自分を卑下してそういった。

彼女は、武道以外に取り柄が無いと言うけれど、その忠誠心は何よりも手にしてよかったと思う最高の取り柄だと思っている。

私の目標を達成する上で、この上なく頼りになる。


さて、あの小僧に私の魅力に気づかせるにはどうしたらいいだろうか。

幸い顔だけは良い私なので、顔で勝負できないことは昨日立証済み。

性格は最悪。超のつくほど毒舌でひねくれ者。

得意な事と言えば、長年の性格のこじれで身につけた、上っ面のいい子ちゃん演技くらい。

そうだわ、彼の事を知りたいなら彼の周りの人を知ればいいじゃない。

思い立ったが吉日と言うし早速今日から屋敷の人達に話を聞きましょう。