こんな風に凛子が笑うのを初めて見たかもしれない。

俺もほほえみ返した。


こいつが彗星になるんだったら、俺はその第1発見者になって、凛子って名前をつけて、いつまでも見守っていたい。

そんなことを半分本気で考えてしまった。俺も凛子に感化されてしまったのかもしれない。

しばらく流れ星は濃紺の空を彩って、それが落ち着くと東の空が白んでいるのに気づいた。

時刻、午前四時。

もうすぐ朝日が登る。


「夜明けだな」

「うん」

「とりあえず学校に間に合うかが問題だな。親にも怒られるだろうし」

「そのまま行く」

「だからお前制服姿だったのかよ!お前最初っからその気だったな!」

凛子は何も言わずくるりと背を向けて星見台から降りていく。

「あ、おい!」

俺は慌ててその後を追う。


まるでさっきまでの出来事が夢のようだ。幻だと言われたら思わず頷いてしまうほどに、現実味がなかった。


けれど俺はきっとこの夜を忘れたりしない。

あいつの涙も、言葉も、流れる星も、みんな確かにここにあった。


さっきよりも白んでいく空、鮮やかになる景色、緑。


見上げた空は、とても澄んでいた。






fin.