凛子はこんなにすぐに消えてしまうような儚い光じゃない。

そんな弱いものじゃない。


「お前は彗星だ」


彗星のように、自分の軌道でいつまでも光り続ける。

凛子は俺の方を見て目を見開いていた。


「彗星」

たどたどしい口調はいつものこいつらしくはなかった。


「流れ星が好かれるのは、それが自分の願いを叶えるための方法だからだ。知らない誰かの願掛けになって、すぐに忘れられてしまう。

だけど彗星は名前がある、唯一の存在だ。自分だけの軌道でいつまでも回り続けて、いつまでも見えなくなるまでずっとずっと人々は見上げる。

だからお前は彗星になれ」


言い切ってから急に恥ずかしくなって凛子をちらりと見ると、ぽかんとしたあっけにとられているような表情をしていた。

しくじった。

くさい言葉を言ったことはないが、まるでそんな言葉を言って失敗したときみたいな羞恥心が体中を駆け巡る。

そう俯いたときだった。凛子は「いいね」といつもの口調で言った。

はっと顔を上げると、そこには口角を上げて微笑む凛子がいた。


「彗星になる」