どこへ行くんだと問いかけようと思ったけど、すぐに無駄だと諦めた。

今問いかけて答えるのなら、こいつはもっと早くに一方的に行き先を告げているはずだ。


電車の乗客は降りていくばかりで新しく乗車してくる人はいない。

6つの駅を通り過ぎると乗客はすでに数人しかいなかった。

皆帰路についているのだろう。自分の家に帰ろうとしていないのはきっと俺達くらいだ。

結局電車を降りたのは終点の駅で、俺は一度も降り立ったことのない駅だった。

凛子は電車を降りるとまっすぐ改札を出る。それから駅を出てしまった。

慌てて追いかけて駅を出ると、外はほとんど真っ暗だった。所々街灯の白々しい明かりがぽつぽつ灯るだけで、民家の明かりも車のヘッドライトもない。

時刻は午前一時半を過ぎたところ、つまるところ真夜中だ。よい子は寝る時間とはいえ、駅前なのに飲み屋もないのか。

しんと夜に沈んでいる街を切り裂いていくみたいに、凛子は歩いていく。まっすぐに、突き進んでいく。

どこに向かっているんだと聞こうとしたときだった。


「今から、山登る」

「はあ?」


それはあまりに突拍子もなかった。

日付も変わった真夜中に、山登り。制服とローファーの女子高生とコンビニに行くような姿の男子高校生が、ふたりきりで。


「…シュールだな」

「嫌なら来なくていい」