夕闇がきみを奪う前に

「え…?」


「だから、お前じゃなきゃだめなの」


何度も言わせんな、バカ。

一回で理解しろよ、俺と違ってお前は頭いいだろうが。


俺は身体を離して、あいつの目をじっと見つめた。

涙でゆれる瞳が綺麗だった。




「お前が好きなんだよ

…アカリ」



あいつはついに声をあげて泣き出した。

子どもみたいにわんわん泣いた。



「私も、好きっ!大好きっ!

ずっと、そばにいてください…っ!」



流れる涙を手でそっとぬぐいながら、俺はあいつの左手を掴んだ。

それからあいつの薬指にそっと口づけをする。


あいつは驚いたみたいに肩を大きく上下させて俺の方を見た。


「指輪、はめるぞ」


あいつは涙をこぼしながら何度も頷いた。

それはたぶんきっと、不細工な顔だった。涙でぼろぼろだし、たぶん他のやつは見てられないような顔だっただろう。

だけど俺にとっては、世界でいちばん美しい顔だった。

世界でいちばんきれいな顔だった。

世界でいちばん愛しい顔だった。

世界でいちばん可愛い顔だった。


泣くなよ、なんて言わなかった。言えなかった。

心の中の感情全部を、見ていたかったから。