それからずっと、俺は指輪を常に持ち歩いてるんだ。あいつの形見だと思って。

ほんと俺って女々しいだろ?

指輪だって、あいつに渡していないのにさ。

左手にはあいつに渡せなかった指輪を握りながら、1枚1枚、写真を目に焼き付ける。

そんな毎日が続いてちょうど1か月。

自分でも呆れるよ。


…もう、俺はさ。

あいつ以外に好きになれる奴なんていないと思うんだ。

あいつ以上に好きになれる奴なんていないと思うんだ。


悲しいほど、あいつの笑顔が胸に焼き付いていて。

痛いほど、あいつを思い出してしまうから。

写真に向かってにっこり笑って、ピースしたりするあいつを、忘れたくないって思ってしまうから。



…ああ、神様。


あんたは残酷だって今でも思うよ。


恨めしいほど、思っているよ。


だけど、もしひとつ、願いをかなえてくれるなら、頼むよ。


俺、もう一度あいつに会いたいんだ。


せめて、この指輪を渡したいんだ。


わがままだとは、分かってるけど。


叶うはずのないことを思って、呆れて笑みをこぼした。

ダメだな、俺は。


6歳の時に訪れた、真夏の海で嬉しそうにピースサインをするあいつの笑顔を切り取った写真に、一筋の頬を伝う涙が落ちた。

その瞬間、光が溢れた。


まばゆいほどの黄色い光があたりを包んで、俺は目を開けていられなくなって目を腕で覆った。




『…ユキ…!』



なぜなのか、本当に少し、あいつに呼ばれたような気がした。