漂う嫌悪、彷徨う感情。


玄関ではしゃぐオレらに、美紗がクスクスと笑った。

美紗の笑顔に、お義母さんもオレも嬉しくなって、必要以上に大騒ぎをしてみせると、

「ねぇねぇ。 そろそろお家の中に入ろうよ」

さすがにやりすぎてしまったのか、美紗の笑顔が困り顔になり、口の前に人差指を立てた美紗に『ご近所さんの迷惑になっちゃうよ』と注意をされてしまった。

「怒られちゃったー。 さぁさぁ、2人共靴脱いであがってー」

『てへッ』とおどけたお義母さんがオレたちに手招きをした。

「おじゃましまーす」

美紗と一緒に中に入ると、美紗は早速鞄を床に置き、コートを脱いでキッチンへと向かった。

基本、美紗は働き者だ。 会社でもそう。 家でもよく動く。

先にキッチンに入り、出来上がった料理を盛り付けていたお義母さんの隣に立ち、美紗もしゃもじを片手にご飯をよそい出した。

自分だけじっとしているのも申し訳なくて、

「オレは何をしましょうか??」

と2人に尋ねると、

「ありがとうね、勇太くん。 でも、勇太くんは椅子に座ってテレビ見てて。 大人3人が動ける程、この家大きくない。 身動き取れなくなっちゃう」

美紗が笑いながらお義母さんに意地悪な顔をした。

「悪かったわねー、狭い家で!!」

そんな美紗の腕を肘で突くお義母さん。

「悪くないよ。 掃除しやすかったもん」

それでも意地悪し続ける美紗。

「嫌味言うしー!! もーう!!」

手に持っていた料理にかからない様に、そっぽを向いて鼻息を荒くするお義母さん。 面白い。 美紗が意地悪したくなる気持ちが分かる。